
研究室紹介
日本の国土面積の66%は森林に覆われており、そのうち41% は人工林です。つまり、日本の国土面積の27%は人工林に覆われています。しかし、日本の木材自給率は半世紀以上、50%未満です(2023年: 43.0%)。
日本の育林・造林作業には多額のコストがかかるため、その大半を補助金で賄っています。にもかかわらず、林内作業員の平均年収は全産業のそれを大きく下回ります。経済的な側面から見ると、日本は林業から撤退する方が合理的と言えるかもしれません。現在の人工林を自然に近い森林に誘導したうえで、林業的な森林管理から手を引けるならば、日本国内の「自然環境」は良くなるかもしれません。
一方、日本で仮に林業をしない場合、木材を外国から輸入する必要が出てきます。日本は森林が容易に育つ気候に恵まれている一方で、世界では大面積の森林が不可逆的な減少をしています。この現実を考えると、他国・他地域に及ぼす環境負荷の面から見ると、日本は林業から完全に撤退するべきではなさそうです。しかしながら、そのために日本の1/4超を覆う人工林全てを、今まで通り維持していく必要はあるでしょうか?
本研究室では上述のような問題をはじめとした、森林の資源や機能を持続的に管理・利用していく手段を探求しています。
主な研究課題

最適な森林施業体系 (植栽から収穫に至るまでの、育林方法やスケジュール)
日本の有名林業地にはそれぞれ特色ある目標生産物があり、それぞれに特徴的な山作りの仕方 (=施業体系) が発達してきました。しかし、戦後は木材の利用形態が劇的に変化し、今までの施業体系が必ずしも適切とは思われない状況が増えてきました。一方、森林の成長モデルは戦後大きく発展を遂げ、また、50年前には考えられなかったような性能を持つコンピュータも開発されてきました。
私達の研究室では、コンピュータとモデルの力を借りて、これからの施業体系を立案する手法そのものの開発や、その手法を用いた施業体系の提案に取り組んでいます。
広域・長期的な森林資源の管理・利用方策の立案
現在、日本では植栽から50年以上経っている (当初想定されていた林齢を過ぎている) 人工林が大半を占める一方で、新植地は限られています。しかし、一度に主伐・更新 (再植林) をしてしまうと、将来再び年齢の偏りが生じてしまうだけでなく、木材が大量に出てきて価格が下がる、ということも考えられます。
そこで、このような複雑な事情にも対応できる、地域レベルの最適更新スケジュールの立案手法の開発や、その応用に取り組んでいます。


森林の資源量推計モデル
森林資源の適切な管理のためには、資源量を正確に推計することが必要です。そのため、森林内での毎木調査・伐倒調査による資源量データの収集や、収集されたデータからモデルを推定する手法も扱っています。
その他の関連分野
森林経理学の基本理念は、「森林からの恩恵を、将来に亘って受け続けられるようにする」ことです。私達の研究室では、上述の主要課題以外でも、この理念に合致するものであれば、研究課題としています。

